遺言書の種類について

遺言書の種類についてお伝えする前に遺言について簡潔にお伝え致します。遺言とは自分の死後に備え意思表示を言葉や文章で残すものです。定められた方式に従い作成すれば「法的な効力」が発生しますが、方式から外れた遺言は無効となる可能性がありますので、遺言を残す際にはしっかりと作成方法を調べ方式に則って書くことが重要となります。遺言で残す内容については、死後の財産分与に関することが多いといわれています。遺族が相続で争うことのないように自らの意思を遺言としてしっかり残しておきましょう。また遺言は、十分な「遺言能力」を備えていることが作成の条件として挙げられますので、判断力が衰えてからでは無効になるケースもあるため注意が必要です。それでは遺言書の種類についてです。

〇遺言書の種類
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

これらはそれぞれ作成方法が異なります。遺言書は方式に沿って作成することで効力をもちますので遺言書の種類を把握しておく事はとても重要です。

〇「自筆証書遺言」
・自筆で紙に書き残す遺言書
・自分で作成できる上に費用も掛からない
・遺言書の中で最も選ばれる方式
・内容が曖昧・不備があると効力を失う
・本文、氏名、日付を自筆で書く必要がある
・開封前に家庭裁判所の検認手続きを申請が必要

〇「公正証書遺言」
・公証人を立て公正証書にした遺言書
・公証役場での作成が可能
・内容を伝え公証人が文章化する方式
・内容について公証人に相談が可能
・確実に効力を発揮する遺言書を作成できる
・家庭裁判所の検認手続きが必要ない
・遺書の原本は公証役場に保存される
・紛失や改ざんのリスクが低く信頼性が高い

〇「秘密証書遺言」
・内容の秘匿性の高さが最大の特徴
・公証役場での手続きが必要
・遺言の内容は公証人にも明かされない
・自筆に限らずパソコンなどでも作成可能
・不備が発覚せず無効になるリスクがある
・開封前に家庭裁判所の検認手続きを申請が必要

遺言は周囲の方達への最期のメッセージになります。内容は周囲の方達に影響を与える為よく考えながら書く必要がありますが、遺言は故人の遺志を死後も尊重する制度であり、正式な方式に則った遺言書は相続に対して大きな影響力をもちます。遺言は遺産分割協議よりも優先して扱われますから遺産についての指針を残すことが可能です。そのため、遺言を残すことで身内の相続に関する争いを防げるケースは多くあるのです。また、遺言は法的な効力を有する遺言事項だけでなく、遺言者の真意をはっきりと家族に伝えるために書くものですから、これまでの感謝の気持ちや胸の内を告白するのにも用います。法的な効力が重要となる遺言事項では方式に沿った書類の作成が必要ですが、自分の気持ちや想いを家族や友人に伝えるための遺言はこの限りではありません。音声や動画などを残す場合もあります。
遺言を作成する際の注意点として、まずは要点をまとめるという点を意識しましょう。要点をまとめた文章作りを意識するとより明確に意思を伝えられます。曖昧な文章は法的な解釈にも議論の余地を作る場合もありますから、なにを伝えたいかを意識し要点を絞って書くことを意識しましょう。家族に何を望むのかをわかりやすく伝えることも重要です。混同しやすい表現は避け「なにを・どうしてほしいのか」が明確に伝わる文章作りを意識しましょう。誰か特定の人物を指定する場合には姓名をフルネームで記し、生年月日まで書いておくと確実です。遺産相続について言及する場合には「なぜ・遺言の結論に至った」という点まで記しておくと、無用な争いの防止に役立ちます。相続に関する内容は家族の理解を得ることが最も重要ですから経緯の説明はしっかりと記しておきましょう。また、遺言書で突然伝えると混乱を招く場合もありますから、可能であれば遺言の内容を事前に家族に相談しておくことも大切です。また、遺言に限った注意点ではなく文章を書く上での基本の注意点になりますが誤字・脱字がないように気をつけましょう。書き終えたら読み返し確認することがとても重要です。遺言は誤字・脱字があると効力を失う可能性もありますから特に厳重に精査する必要があります。誤字や脱字を防ぐには時間を空け複数回読み直して確認したり、可能であれば自分だけで済まさずに弁護士などの第三者に確認してもらうと効果的です。

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遺言の書き方や注意点

最も自作で選ばれる遺言書では「自筆証書遺言」ですが、偽造を防ぐ為にも自筆で作成する必要があり代筆は認められていません。ただし通帳のコピーで預金を特定させても良く、財産目録についてはパソコンで作成しても良いとされています。それ以外については手書き以外での作成は認められていません。また遺言の執行には家庭裁判所の検認手続が必要となりますが、自筆証書遺言の保管制度で法務局で自筆証書遺言を保管してもらう場合は検認の手続きが不要となります。自筆証書遺言の保管手続きには本人確認書類等が必要となり、法務局で自筆証書遺言の内容確認がされますので封は必要ありませんし、法律上の要件を満たしているのか確認をしてくれます。また、法務局では遺言の原本を保管するだけでなく、その内容を画像データにして保存してくれますので相続人は全国で遺言書の有無や内容を確認することが可能になります。遺言には「特定遺贈」と「包括遺贈」という方法があり、遺贈とは遺言によって自分の財産をあげることで、財産を特定して遺言書を書く場合を特定遺贈といいます。反対に財産を特定せず割合で示して遺贈する遺言書を書く場合を包括遺贈といいます。遺言書を書く場合には包括遺贈の方が割合を示すだけで済むので簡単なのですが「どの財産を・誰が相続するか」ということが明確に決まっていないと、せっかく遺言書を作成しても相続トラブルに発展してしまう恐れもありますから遺言書を作成する場合には包括遺贈ではなく特定遺贈の方が望ましいと言えるでしょう。

〇自筆証書遺言を作成する際の注意点
・財産目録以外は遺言者本人が直筆で書く
・代筆やパソコンで作成した場合は無効
・遺言書を作成した年月日を直筆で記入
・日付印などの記載や日付のない場合無効
・自筆による署名がない場合は無効
・認印・拇印でも問題はない。(実印が好ましい)

また、遺言書が何通もある場合には後の日付のものが有効となり、遺言書が数枚にわたる場合には割印をするのが好ましいとされています。変更箇所がある場合には具体的な変更箇所を指示し変更した旨を付記した上で署名捺印し、変更箇所にも捺印をしなければなりません。なお、縦書き・横書きの形式はどちらでも構いません。用紙や筆記用具についても何を使っても良いとされていますが消すことが出来るボールペンなど簡単に消えたり改変できるような筆記用具の使用はやめましょう。封筒に入れなければならないというルールなく、遺言書には財産に関するものだけではなく「子の認知」「未成年者の相続人の後見人」などについても指定することができます。民法で財産の相続分について法定相続分が定められていますが、遺言で指定をした場合には遺言の方が優先されます。ただし、記載された内容すべてが法的な効力を持つ訳ではなく法的な効力を持つ遺言の項目は主に以下の十項目に限られています。
・子の認知
・後見人の指定
・遺贈
・相続の廃除または排除の取消
・相続分の指定または委託
・遺産分割の禁止
・遺産分割方法の指定または委託
・遺言執行者の指定または委託
・相続人相互の担保責任
・遺言減殺方法の指定
上記以外の内容は遺族は必ずしも守らなければならないということにはなりませんので注意が必要です。