位牌の知識

位牌とは、仏壇や祭壇などに安置される故人の戒名や法名の書かれた木牌のことを指します。日本の宗教観では古来より位牌に故人の魂が宿ると考えられており、先祖の魂を大切に祀るために使用されています。葬儀から忌明けである四十九日までは白木位牌、その後は本位牌など、用途に応じ様々な種類が存在しているので正しく選ばなければなりません。どのご家庭でも位牌は仏壇に祀っているケースが多いですが、その取扱いや種類は地域や宗教・宗派などに応じて異なります。また、近年では宗教観の多様化も進んでおり、わざわざ位牌を作らずに供養だけ行うという方も増えているそうです。
一口に位牌と言っても、詳しく見ていくと「白木位牌」「本位牌」「寺位牌」という三種類に分かれています。それぞれ、使用される目的だけでなく安置される場所なども異なりますので、それぞれの特徴を詳しくお伝え致します。
〇白木位牌(仮位牌)
故人が亡くなってから最初に作る位牌
四十九日法要が明けるまで使用する仮位牌で、四十九日は魂が彷徨っている状態で成仏していないと考えられている為に正式な位牌を用意する訳にはいかないといった理由から仮の位牌を用意します。法要後には本位牌と取り替え、本位牌に取り替えた後の白木位牌はお寺でお焚き上げしたりお墓に納めたりするのが一般的です。
〇本位牌
四十九日法要が明けた後に白木位牌と取り替えて使用するものが本位牌です。本位牌は自宅の仏壇や祭壇に安置し毎日供養することになります。
本位牌はさらに「札位牌」と「繰り出し位牌」に分けることができます。
●札位牌
亡くなった方、一人ひとりの名前を記します。基本的には33年もしくは50年供養した後に繰り出し位牌へと移すことになります。
●繰り出し位牌
先祖の位牌を一つにまとめて収納できるものです。基本的には札位牌で33年もしくは50年供養した後に移すことになります。
●寺位牌
その名の通り自宅ではなくお寺に安置してもらう位牌です。お寺の本堂などに集められ、僧侶に供養してもらうことが可能です。自宅に安置する場所が無い場合や継ぐ子孫がいない場合にも永代供養してもらえるので安心です。自宅の本位牌を預ける事も、お寺で新たに作ってもらう事も可能です。

そもそも位牌は絶対に作らなければいけないものなのかという疑問を抱く方もいらっしゃるかと思います。結論から申し上げますと、実は仏教においては位牌は必ずしも必要とはされていません。仏教では亡くなった方の魂は転生を繰り返すものだと考えられており、必ずしも位牌が必要とは説いていないのです。亡くなった方への感謝の気持ちを表したり、心の拠り所として重視されている為、位牌を必要とする方が多いのです。ですから故人を偲ぶという意味合いが強い背景もあり、仏教徒ではないクリスチャンや無宗教の方でも位牌だけは作るというケースも珍しくはありません。
また、仏教では位牌を作るのが基本であるにも関わらず、浄土真宗では本位牌を不要としています。浄土真宗には「人は仏さまの導きにより、浄土に往生し仏となる」という教えがあります。これは、浄土真宗のご本尊である阿弥陀如来を信じて奉ると決めた時点で、誰もが仏になれることが約束されているという教えです。つまり、浄土真宗では、故人の魂は亡くなってすぐにこの世を離れ成仏していると考える為魂が宿った位牌を仏壇に置いて供養していく必要がありません。同様の理由から位牌の魂入れも行いません。故人を偲んでお参りをしたい方の為に、浄土真宗では位牌の代わりに「法名軸」や「過去帳」をすすめています。

お葬式の豆知識
遺影の知識

遺影選びは葬儀を行う上で難しい問題のひとつです。具体的な遺影の選び方のポイントとして、まずなるべく亡くなった年に近いものを選ぶという点が挙げられます。亡くなった年に近いものを選ぶ事により、その年まで生きた証になるのと同時に年齢を重ねた故人の歴史を振り返るきっかけにもなります。逆に実年齢とあまりに掛け離れた写真では違和感が勝ってしまいますので好ましくありません。また、長い間入院生活を送っていた場合などには病床中の姿よりも、病気になる前の元気な姿や病状が良い時に撮影した写真を選ぶ方が良いと言えます。
祭壇の真ん中に飾られる遺影は故人の人柄や生き様を表す大事な写真ですからなるべく良い表情でカメラ目線のものを選ぶ様にすると良いでしょう。カメラ目線のものを選ぶと良いというのは、参列者がお焼香をする際などに遺影を見た時に目を合っている感覚になる事ができ、故人との最後のお別れが素敵な思い出として残るといえる為です。ひと昔前までは白黒で無表情の遺影が一般的でしたが、近年はフルカラーで表情豊かなものでも全く問題ありません。写真を選ぶ際は表情の良い写真を選び出してその中から絞り込んでいくと良いでしょう。
良く写っている写真を選ぶだけではなく、その中からなるべく大きく写っているものを選ぶ事も大事なポイントです。近年の写真では解像度が高い物が多いのでネガが残っていなくても拡大して使用することが可能ですが、あまり小さく写っている写真では拡大した際に写真が荒れてしまうこともあるので注意が必要です。同時にピントが合っていない写真も拡大した時には特にぼんやりとした写真になってしまいますので、多少なら問題ありませんが大幅にピントが合っていてぶれているような写真は避けましょう。
最後に、遺影用の写真を選ぶ際に背景や服装が気になってしまう方もいらっしゃると思います。前述した条件を満たしていても、服装がくずれていたり背景に他の人が写りこんでしまっていたり遺影の背景としてはあまりに良い印象を与えない風景であったりすると、遺影にするには気が引けてしまう場合もあるかと思います。近年では写真の加工技術が発達していますので、遺影にしたい写真の服装や一緒に移りこんでいる人や物、風景などが気になる場合は加工する事も可能ですので時間や金銭的に余裕がある場合には選択肢に入れても良いでしょう。また、写真の加工では明暗も調節できますので故人の表情や故人らしさを尊重して写真を選ぶことが大切です。
ここからは葬儀を終えた後の遺影の置き場所や飾る場合にはどうしたら良いのかをお伝え致します。葬儀を終えた後はご遺骨安置檀(後飾り)に遺影を飾ります。後飾りは四十九日まで飾ることが一般的とされていますので、納骨が終わった後は後飾りの棚は基本的に不要となります。その為、お盆や法事で遺影を使用する予定がない場合には、遺影に敬意を持つことは大切ですが遺影そのものには宗教的な意味はないですから、位牌等と同じ様に捉える必要はありませんので処分してしまっても問題はありません。基本的には供養を行う必要があるわけではありませんので例えば自分で祈りながら焼却することも可能ですが、気分的にそれではあまり良くないと思われる場合には、ある程度の費用や時間は必要ですがお寺や神社で供養をお願いする事も勿論可能です。
遺影の場合は処分する人の気持ちや考え方が大切になってきますのでどのような処分の仕方が一番後悔や心配が残らないで済むかということで選ぶと良いでしょう。遺影を選ぶ際にその後について考えて写真のサイズを小さくする事も一つの選択肢です。近年では核家族が多く仏間のない家庭も多くあるので、大きな遺影を飾るスペースがない場合や置く考えがない場合があると思います。その場合でも小さいサイズにしておくと飾る場所を取らず、置く場所の選択肢が増えるので近年の生活形式に合った方法でしょう。その他、遺影をデータ化してパソコンなどで保存する方法も増えてきているようです。
何点か例を挙げましたがそれぞれの生活や時代によっても遺影のその後の対応は変わりますし、人によっても遺影に対する気持ちや想いは違うものです。いずれにせよ、それぞれに合った形式でも故人に対する敬意を忘れない事が大切でしょう。